ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


思わず触れたくなるような…白い柔肌に咲いた、沢山の赤い花弁。


数は1つや2つじゃない。

なんだ、この状況。



全身から血の気が引いていく。

喉は渇ききってひりひり痛い。


ぐらり、と何かが揺れる。


同時に腹の底から湧き上がる怒り。

その激情に気が狂いそうになる。



「あ、ち、違うの。

これは事故みたいなもので」



「事故でそんなのつくかッ!!!」



「い、いやその……

……これは蚊で。


そ、そう。


大きな蚊に刺されたの。


あ~痒い、痒い」






「俺は蚊かよ。



……芹霞ちゃん」




今まで俺が故意的に存在を無視していた金色の男。


ぼそりと呟いたんだ。



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