ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


 
「櫂様、玲様。櫂様も守れず、芹霞さんを危険に陥れる…こんなに情けない腑抜けた馬鹿蜜柑などとっとと排斥して、紫堂警護団の団長であるこの桜をお使い下さい。桜は馬鹿蜜柑とは違って、至って真面目に…」


「真面目な"男"が、

んな格好しねーだろ!!?」


煌が怒鳴った。


美少女の名は葉山桜(はやまさくら)。


桜ちゃんは1つ年下の――

女装した"美少年"である。


あたしと知り合った6年前くらい前にはもう、桜ちゃんは女装していた。


女装の動機は未だ不明であるけれど、性同一性ナンチャラとかいう病ではないみたいだ。


女装していても、櫂も玲くんも不思議と突っ込まない。

慣れきったとはいえ…受容している処は懐が大きいというべきか。


いつも反応するのは煌くらいなもの。


「あら私、至って真面目ですわ。

粗野な蜜柑男とは違いますの」


大きな目をくりくりさせながら言う桜ちゃん。


自分で作ったという、お手製の黒いテディベアを両手でぎゅうと抱いている。


ああその仕草、なんて可愛いんでしょう。

絶対、男の子には思えない。


正しく、"男の娘(こ)"だ。


だけど…桜ちゃんの顔には表情はない。

唯一感情を判ることが出来るのが…その大きな目の動き。



「変態がよく言うよ。


お前の戦闘姿といったら……」



鼻でせせら笑う煌に――







「黙りやがれ!!




――このボケッ!!」





突如男声(バスバリトン)を放ち、

煌の顎を容赦なく蹴り上げたのは…



「お前、何するよ!!!?」



勿論美少女――桜ちゃん。




「あ゛!!!?


てめえのようなド変態に、


笑われる程落ちぶれてねえ!!!」



この2人はとても仲がいいんだ。


すぐにじゃれあう。



微笑ましいなあ…。

< 34 / 974 >

この作品をシェア

pagetop