ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「櫂様、玲様。櫂様も守れず、芹霞さんを危険に陥れる…こんなに情けない腑抜けた馬鹿蜜柑などとっとと排斥して、紫堂警護団の団長であるこの桜をお使い下さい。桜は馬鹿蜜柑とは違って、至って真面目に…」
「真面目な"男"が、
んな格好しねーだろ!!?」
煌が怒鳴った。
美少女の名は葉山桜(はやまさくら)。
桜ちゃんは1つ年下の――
女装した"美少年"である。
あたしと知り合った6年前くらい前にはもう、桜ちゃんは女装していた。
女装の動機は未だ不明であるけれど、性同一性ナンチャラとかいう病ではないみたいだ。
女装していても、櫂も玲くんも不思議と突っ込まない。
慣れきったとはいえ…受容している処は懐が大きいというべきか。
いつも反応するのは煌くらいなもの。
「あら私、至って真面目ですわ。
粗野な蜜柑男とは違いますの」
大きな目をくりくりさせながら言う桜ちゃん。
自分で作ったという、お手製の黒いテディベアを両手でぎゅうと抱いている。
ああその仕草、なんて可愛いんでしょう。
絶対、男の子には思えない。
正しく、"男の娘(こ)"だ。
だけど…桜ちゃんの顔には表情はない。
唯一感情を判ることが出来るのが…その大きな目の動き。
「変態がよく言うよ。
お前の戦闘姿といったら……」
鼻でせせら笑う煌に――
「黙りやがれ!!
――このボケッ!!」
突如男声(バスバリトン)を放ち、
煌の顎を容赦なく蹴り上げたのは…
「お前、何するよ!!!?」
勿論美少女――桜ちゃん。
「あ゛!!!?
てめえのようなド変態に、
笑われる程落ちぶれてねえ!!!」
この2人はとても仲がいいんだ。
すぐにじゃれあう。
微笑ましいなあ…。