ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「ねえ実さんの学校では、女生徒間で…携帯の無料恋愛ゲームは流行していますか?」
慎重に聞いた質問は、あっさりと返ってきた。
『B・R(ブラッディ·ローズ)か?』
私は、肯定の声を発して…目を細めた。
『あれ、隼人が出演していたみたいでよ、以前隼人が照れくさそうに自慢していた。女達が携帯片手に隼人指さしてギャーギャー騒いでいたが……これからはそういう光景もなくなるんだな』
電話の声は哀しげだった。
佐々木実という少年は、外形こそ今流行の若者だが、意外に感受性豊かな人種なのかもしれない。
『ゲーム攻略者には、隼人の携番、教えてくれるみたいで、あいつ…本命用の携番は公開してないから、結構本気でヤバイとか焦ってたよ』
その彼はもうこの世には居ない。
流行している恋愛ゲーム。
ゲームと同じ名の呪言。
元老院が探す篠山亜利栖。
緋影。
黒の書。
死んだ同級生。
死んだ元彼。
もし全てが繋がっていたら。
確実にない必須ピースがある。
――あの女を輪姦して、写真まで撮ったらしいんだ。
「ねえ、実さん。篠山亜利栖さんを襲った方々のお名前、ご存知ですか?」
『え?』
もし私の推測が成り立つのだとしたら――
ゲームの向こう側には、篠山亜利栖の意思がある。
そう。
姿を見せない、彼女の意思――。