ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「僕が集団の血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に襲われたゲームのプレイベント時刻。
そして――
櫂が倒れた時刻、だ」
「頭痛でぶっ倒れただけのは、不幸中の幸いという奴か?」
櫂様が少しだけ皮肉気に笑った。
「ぬるすぎやしないか」
玲様は固い顔をして、櫂様を窺い見た。
「ああ。俺も思っている。仮に俺が呪詛に対して、人より抵抗力があったとして、尚も結界の張られたこの家に直ぐ運ばれたとして。呪殺する気ならもっと執拗でもいいはずだ。呪詛の対象に俺が入っている理由が『紫堂』であれば、紫堂の力を予想できないはずはない」
「同感だ。櫂に何かをしたければ、まずここから引き摺り出す状況を作らないと。呪詛が大きければ大きい程、結界を強めてこの家に籠城するくらい、容易に予想出来るはずだ。これならばまるで」
そこで玲様は言葉を止め、櫂様を見た。
それをまっすぐ受けた櫂様は言った。
「やはり、俺だけ意味合いが違うな。例え最終目的がそうであっても、あの時点では俺の意味は違う。
――命を奪うことではない。
弱めることだけが目的、か」
「ああ。だとしたら、なぜ櫂を、頭数に入れる必要があったんだ?」
「5人、じゃないといけない理由ですか?」
私は問うた。
「そう。何で5人じゃないといけないのか。最早ただのゲームじゃない。呪詛だ。黒の書の呪力に加えて、蠱毒なんて呪詛の基本を……。
基本……?」
そして玲様は何かに気づいたように、メインコンピュータの大きな画面に赴き、
「山手線路線図」
と言った。