ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
『いやあのね、突然蒼生がね』
「蒼生!? 『氷皇』だろッ!!?」
ああ、それは玲様も。
此の場で、呼び方などどうでもいいと思うのは、私だけなのだろうか。
『あ、そう。その氷皇がね、会長と……あ、ねえ、煌。何か音聞こえてこない?』
また、1人追加だ。
氷皇――瀬良蒼生と
会長――御階堂充?
道化師と繋がっていたのか?
だけどそれなら、何故芹霞さんは、3人で帰ると言っていたのだろうか。
「芹霞」
櫂様が叫んだ。
「必ず戻れよ
――俺の処へ」
泣きそうなくらいの切ない声。
行きたいのだろう。
駆けつけたいのだろう。
櫂様は必死に我慢している。
『……うん』
「俺も呪詛を何とかしたら迎えに行く。
だから――煌と頑張れよ」
『判った。約束ね、櫂』
「ああ」
『……え、なに煌……。……あー、櫂?』
芹霞さんの声から馬鹿蜜柑の声に変わった。
どうも芹霞さんから無線機を奪い取ったらしい。
………。
また妬いたのか、あの馬鹿は。