ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
紫堂当主の命令は絶対的。
何があっても遂行させねばならない。
だけど今は――。
「こんな状況でどうすんだよ、櫂」
途方に暮れたような鳶色の目。
そんな玲様とは対照的に、
「やれなかったなどという報告だけは死んでも嫌だ。
だとしたら、やるしかないだろう?」
超然とした、余裕ある笑い。
人を超えた美しさが際立って輝く。
不思議と――
櫂様なら出来る気がしてきた。
不可能にも思われることを、櫂様ならきっとやってのける。
今までのように――。
「……無謀だと言いたい処だけど。
芹霞が御階堂の元にいるのなら一石二鳥だ。事と次第によっちゃ、大義名分で叩きのめせる」
そして白皙の、端麗な顔も悠然としていて。
そう、彼らは…
好戦的な紫堂の血を引くのだ。
やられたら倍以上で返すのが彼らの信条。
「あの男には、俺も随分と…日頃からストレスを溜めさせて頂いているからな、楽しみだ」
「では、早く呪詛を何とかしないとね」
そう玲様が笑った時だった。
ピピピピピ。
部屋に、機械的なアラーム音が鳴り響いたのは。
「よし、抜けたッ!!」
嬉しそうな声で――
玲様がモニター画面に飛びついた。