ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「お前――なぜ力に固執する」
すると御階堂はくつくつ笑った。
「愚鈍なお前などに判るまい。
判らせたいとも思わない」
「別に判りたくもないがよ、芹霞だけは手出しさせねえ。例え氷皇が居ようがな。
俺だけじゃねえさ。こんなこと仕出かして…櫂も容赦しねえぞ?」
「ふん」
御階堂は鼻でせせら笑う。
「紫堂櫂。せいぜい、いきがっていればいいさ。計画ではもう、道化師が殺っていたはずだったが、予定狂ったとしても結果は同じ。楽しみが伸びただけだ」
「……はあ!!?」
声を出したのは芹霞だった。
俺の手を振り解き、御階堂の真っ正面に立って叫んだ。
「そこまで腐った性根だったの!!?」
今更気づいたのかよ、芹霞。
お前気づくの遅いって。
「気に食わないというだけで、殺そうなんて冗談じゃないわよ。櫂に手出しするなんて、あたし絶対許さないからッ!!!」
「芹霞に同感だ。それに――」
呼応した俺も立ち上がり、芹霞の後ろに立つ。
「紫堂を、警護団をなめるな」
御階堂は口許を、意地悪く歪ませた。
「最近、鬱陶しいくらいに俺に付き纏うグラサン黒服の奴ら見れば、判るだろうがよ」
否定しない処をみると、やはり刺客は御階堂から放たれた者だったか。
「あんな男達では、櫂に触れることさえ適わない。
それに櫂には玲の結界がある」
鼻で笑う処を見れば、紫堂という特殊事情は知っているんだろう。
玲が作る結界の強力さも、判っている様で。
「確かにあれは厄介だが、紫堂は永遠閉じこもるような男でもないだろう。まして、神崎が此処にいるとなれば。
神崎を迎えに結界から飛び出た処を殺すのでも、結界に守られたあの家の中に氷皇を遣わすのでもいい。
どんなに紫堂を守ろうとして、お前達が大勢で足掻こうと…"運命"は変えられない」
この男――
殺してやりてえ。