ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
├お姫様の脱走2
*************
世間は――狭い。
由香ちゃんが相手をしている"酷いハッカー"とは、玲くんのことだろう。
間違いなく。
そのハッカーの足取りの一部が、逐一身に覚えがあるものだから。
だから…聞いてみた。
「ねえ、由香ちゃんが作ったというゲームって、『B・R(ブラッディ・ローズ)』っていう恋愛ゲーム?」
「そうだよ~」
期待を裏切らない、嬉しそうな声。
「何だい、神崎も遊んでいるのかい?
ああそうか、宮原の友達だったね、君は」
何処までも無邪気なもので。
「…あのさ、由香ちゃん」
「んー?」
「あのゲーム、何?」
「何って…遊んでいるんだよね、君」
「いやその、東京イケMENSといちゃいちゃゲームだっていうのは判るんだけれど、それだけじゃないでしょう?」
すっと…由香ちゃんの体が離れ、その目が細められた。
――警戒、だ。
由香ちゃんはやはり、事情を知っている。
だからあたしは、ずばりと切り込んだ。
核心へと。
「血色の薔薇の痣(ブラッデイ・ローズ)って言えば判る?
あれ――何?」
由香ちゃんの顔から、親しみやすい柔らかさが消えた。
変わって出たのは…
真情を覆い隠すかのような冷ややかな仮面。
「あたしね、弥生と一緒に2回も襲われたんだ。しかも昨日のプレイベントだというので、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の集団に襲われたんだよ」
暫し、あたし達は見詰め合う。
張り詰めた空気を纏いながら。
「教えて、由香ちゃん」
「………」
やがて――…
由香ちゃんが口を開いた。
「昨日のあれは――
血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の淘汰。
絶対数の調整――兼呪詛」
溜息混じりのその口調には、
それまでの甘ったるさはない。
「血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に遭遇して、闘いに勝って、それで普通のままなんてね。
――バグ取り、しないとな」
何処までも冷めたものだった。
世間は――狭い。
由香ちゃんが相手をしている"酷いハッカー"とは、玲くんのことだろう。
間違いなく。
そのハッカーの足取りの一部が、逐一身に覚えがあるものだから。
だから…聞いてみた。
「ねえ、由香ちゃんが作ったというゲームって、『B・R(ブラッディ・ローズ)』っていう恋愛ゲーム?」
「そうだよ~」
期待を裏切らない、嬉しそうな声。
「何だい、神崎も遊んでいるのかい?
ああそうか、宮原の友達だったね、君は」
何処までも無邪気なもので。
「…あのさ、由香ちゃん」
「んー?」
「あのゲーム、何?」
「何って…遊んでいるんだよね、君」
「いやその、東京イケMENSといちゃいちゃゲームだっていうのは判るんだけれど、それだけじゃないでしょう?」
すっと…由香ちゃんの体が離れ、その目が細められた。
――警戒、だ。
由香ちゃんはやはり、事情を知っている。
だからあたしは、ずばりと切り込んだ。
核心へと。
「血色の薔薇の痣(ブラッデイ・ローズ)って言えば判る?
あれ――何?」
由香ちゃんの顔から、親しみやすい柔らかさが消えた。
変わって出たのは…
真情を覆い隠すかのような冷ややかな仮面。
「あたしね、弥生と一緒に2回も襲われたんだ。しかも昨日のプレイベントだというので、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の集団に襲われたんだよ」
暫し、あたし達は見詰め合う。
張り詰めた空気を纏いながら。
「教えて、由香ちゃん」
「………」
やがて――…
由香ちゃんが口を開いた。
「昨日のあれは――
血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の淘汰。
絶対数の調整――兼呪詛」
溜息混じりのその口調には、
それまでの甘ったるさはない。
「血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に遭遇して、闘いに勝って、それで普通のままなんてね。
――バグ取り、しないとな」
何処までも冷めたものだった。