ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「どういうことだ?」
目を細めた煌が、隣で聞いた。
「元々あのゲームは、呪詛を無限増幅させるための隠れ蓑なのさ。ボクは呪いとかそういうのは詳しくないけれど、聞く処によれば、男より女の恨みが、しかも恨みを持って死に行く者の負の力は凄まじいんだって。
だから。女の子が飛びつきそうなジャンルにしてみたわけだ。
呪詛以外にも外部的要因はあるけれど、簡単に言えば…血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に殺された者は死に絶え、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を殺した者は…次の血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)となり、誰かを襲う側となる。
そんな環境で渦巻く怨念は、プログラムによって増幅された呪詛に乗り、当初より設定された攻略キャラに向かう」
由香ちゃんは幽かに笑った。
「ああ、そうか。神崎は紫堂と仲がよかったんだっけ。彼は死んだ?」
「死んでないッッ!!!」
あたしは叫んだ。
どうして――
何でもないと言った顔で、淡々と話すのだろう。
どうして――
人事のように、まるで虚構(ゲーム)だと言いたげに語るのだろう。
「由香ちゃんが把握している呪詛というものがどの程度かは判らないけれど、それでも人が死に、そして死んでからも他の人を襲うような無限地獄作って、何とも思わないの?」
あたしは少し怒りを込めて言った。
「……じゃあ君は、自分勝手な正義振りかざして、人を平気で踏みつけて高笑いしている人間は、許せるの?」
返されたのは――
凍てついた目だった。