ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



俺は――

いばらに眠る姫ではない。



俺が――

いばらの奥で眠る芹霞を目覚めさせる、運命の王子になりたいんだ。



もし芹霞が、俺ではない誰かのキスで目覚めたとしたら、俺は間違いなく気が狂うだろう。


それくらい、俺は芹霞しか見えない。


欲しくて欲しくて堪らない。

芹霞は…俺だけのもの。


何度、叫びたくなったか。


――はい、約束します。父上。



芹霞が手に入るなら。


どんなに苦しみ喘いでも、

ひたすら耐え忍んでやる。


それくらいの覚悟はとうに出来ている。


――はい、約束します。父上。



例え今、待つしか方法がなくても。


どんなに、もどかしい状況をぶち壊したくても。



俺は、まだ動けない。



「判ったようだね」


満足気な玲の声が聞こえる。



くっそ!!!



――あたし達は永遠よ。約束ね?


俺の想いに気づかないのは、芹霞だけ。


「折角僕が、8年前を知らないフリしてるんだから。

感謝して欲しいよ?」


愉快そうな声が、俺の耳元で囁く。


本当に……

ちくしょうッッ!!
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