ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
└お姫様と電脳オタク2
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皆が待つ裏門へ。
あたしは櫂と、来た道をまた戻っている。
今日はよくよく…この屋敷を彷徨ざられる日だ。
道――とは言えない、ガラクタの障害物だらけで、見る度風体を変えているけれど。
ずがあああん。
どんな障害物に阻まれても、櫂がいれば迂回する必要もない。
「櫂。そんなに何度も何度も大丈夫?」
「そんなにヤワな作りはしてないさ」
8年前はヤワヤワだったくせに。
「……玲くん、外気功だとか言うの連続するの、大変そうだったし」
発作起こして苦しんでいた玲くん。
「玲くんも来ているんでしょう? 身体大丈夫かな」
「なあ芹霞」
櫂は髪を掻き揚げて言った。
「呪詛がなければ…あいつが倒れることはなかった。
あんな血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)如き敵にもならん。
心臓をカバーできるほどの力をあいつは持っている。発作が起きたのは、それだけ呪詛が強かっただけのこと。
あいつは簡単に倒れる弱い男じゃない」
言い切る櫂。
「だからあいつが弱いなんて、決して思うな」
射竦めるような、真剣な切れ長の目。
「判ってるよ」
あたしは笑った。
「それくらい、平凡女のあたしだって判る」
そう断言した時だった。
「来いッッッ!!!」
櫂が驚いた顔をして、あたしを荒く引き寄せたのは。