ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
櫂の右手が緑色の光を纏うと同時、
あたし達の身体がその光に覆われた。
あたしに飛んでくる鋭利な刃物が、それを突き刺そうと突然数を増やして牙を剥いたが、緑色の防御壁に阻まれて動きを止め、そのまま垂直落下した。
また――殺気。
そして。
何かが襲い掛かってきた。
「櫂、真上ッ!!!」
そこであたしは見てしまう。
天井としての痕跡残す瓦礫に、
真っ逆様に――
四つん這い状態でこちらを威嚇するもの。
重力など完全無視したそれは、人型をとっていた。
「何、あれ!!!!?」
思わずあたしは震えた。
真紅色の瞳。
獣より、悪魔に近い…底冷えしそうな目。
途端、あたしの中で何かが走った。
――……ちゃああああん!!!
恐怖。
――芹霞、返事をしろッッ!!!
戦慄。
――……んじゃいやあああ!!