ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



赤い、赤い視界。



何だろう。


あたし、見たことがある。


何処でだろう。



ぼんやりと霞む視界の奥で、櫂が何かを叫んでいる。


あたしを抱えて何かと戦っている。




何――と?




どくん。




心臓が波打った。




痛い。




「――っ!?」





櫂、身体が痛いよ。





あたしの叫びは声にならない。



櫂。




――芹霞ちゃあああん!!



どうして泣いているの?




――……んじゃ嫌だあああッッ!!


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