ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「緋影が…陽斗がオリジナルって言ってた。
だったら、煌も……そうなの?」
僕は…小さく頷いた。
「忘れはしないだろうけど、恨んではいないと思う。あいつはポジティブシンキングだからね、神崎家に影響されて」
「そ、そうかな?」
「煌に『人間』を教えてくれてありがとう」
本当にそう思うんだ。
光と闇の分岐地点に神崎姉妹がいたから。
彼女達が光に連れたから。
今の煌が居る。
それは…僕らも同じこと。
「………」
話しながら僕は、気配を感じていた。
櫂の近くにあった殺意と似たもの。
あれと同じものではないけれど、鋭い殺意だけは変わらない。
――別の制裁者(アリス)だ。
赤い瞳――
殺意の塊を象徴する、"アリスの瞳"がこちらを向いている。
その瞳を見ただけで、普通の人間は闇に沈む。
命を落とす。
故に、邪眼。
芹霞には禁忌の瞳。
芹霞に近づけさせてはいけない、
8年前に滅んだはずの邪悪な瞳。
もう、我慢の限界だ。
芹霞に手出しはさせない。
躊躇も迷いも消そう。
どこまでも非情に叩きのめそう。