ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

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「ねえ、芹霞」



玲くんが微笑みながら言った。



「少しの間、目を瞑って耳を塞いでいてくれる?」



「え?」



「僕、少し暴れたいから」




玲くんの視線を追うとそこには――




――赤い瞳。




「芹霞の――を奪うのは


僕は許さない」




玲くんの声は小さくて、よく聞き取れなかった。



それでもその声音の響きは、




「奪わせるかよ。



――アリスの瞳如きに」




いつになく荒いもので。



玲くんがドアを乱暴に開けてそれに襲い掛かるのと、あたしが目を瞑るのがほぼ同時だった。




櫂と居た時に見た人型ではない。



そしてあの服――。




「なんで、陽斗と同じ服着ているの!!?」




あたしは悲鳴のように叫んでしまった。

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