ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




ガツンガツンという振動にベンツが震える。


砲弾にもびくともしない特注ベンツが、横に揺れて悲鳴を上げている。


闘いの余波だけで、ひっくり返りそうだ。



うっすらと目を開けてみた。



玲くんの姿。



弥生の家の時より動きが早い。



――あいつが弱いなんて、決して思うな。



弱いなんて思っていなかったけれど、どちらかといえば狭い場所で防衛に力を注いでいたあの時とは違う。


そう――攻撃的なのだ。


何かを吹っ切ったかのように、彼は自由にのびのびと動く。


舞うような優雅さは変わらないものの、身体を労(いた)わるつもりもなく、躊躇するつもりもなく、それはキレた時の煌の姿にも似ていて。


獲物を狩る動物の如く。


強いて玲くんを例えるのなら、気高くしなやかな豹。


――白豹。


戦うその姿を、綺麗だと思った。


風雅な姿に不謹慎にも見蕩れてしまった。



ばりばりばりばり。



雷が落ちたような音に吃驚して窓に飛びつけば、玲くんは電磁波の青光を放出している。


直感的に判る。

あれは身を守る"結界"ではない。



敵を滅ぼす"攻撃"だ。


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