ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
容赦ない。
攻撃に更に攻撃を重ねている。
まるでモノを相手にしているように。
対峙している赤い瞳がこちらを向いた。
その肉体は血に塗れ、肉が裂け、ぼろぼろで力がないというのに、その目だけは異常に生気に満ちていて。
まるで――
血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)のように。
「ひっ!?」
あたしは思わず目を瞑って両耳を塞いだ。
玲くん、がんばって。
玲くん、がんばって。
呪文のように唱えていた。
『ごきげんよう』
不意に聞こえた声は、幻聴だと思った。
『お初に御目文字申し上げます』
甘ったるい女の声。
目を瞑り両耳を塞いでいるのに聞こえる声音。
直接――
頭に響いてくる不思議な声。
『以後、お見知りおきを』
思わず目を開けて窓を見る。
相変わらずの玲くんの戦闘。
その奥で――
「!!!!?」
薄紫色の着物姿の少女が微笑んでいたんだ。