ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
腰まである長い黒髪。
細い体の線。
くりっとした黒い目。
赤い小さな唇。
美少女だ。
玲くんにすら気づかせない、あんな至近距離で。
どくん、と心臓が鳴った。
周りから――音が消えた。
少女は艶然と微笑んだ。
清楚な中での色気ある微笑。
その差異に恐怖さえ覚える。
目元の3つの黒子が厭に艶かしく。
ぐらぐらと視界が揺れてくる。
かたかたと身体が震えてくる。
あたしは目を閉じ両耳を塞ぎ、
蹲(うずくま)るようにして座席で丸くなった。