ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
ねえ櫂。
あたしに何か、隠していることあるよね?
時々、あたしを辛そうな顔で見るから。
昔のように穏やかな顔を向けてくれないから。
もっともっと…
昔より、もっと深く、
櫂の中にあたしを入れてくれないの?
櫂…。
なんだか――寂しいね。
求められないっていうのは、哀しいね。
あたしは平凡すぎるから。
そんなあたしは必要ないのかな。
ああ、せめてあたしに力があったのなら。
あたしが特別な存在であったなら。
紫堂の警護団に入れたかな。
煌と一緒に、櫂を護れたかな。
そうしたら桜ちゃんや玲くんとももっと仲良くなって、秘密なんかない親密な間柄になって。
櫂が大好きな皆と、もっと深く判りあえたりして。
あたしね、皆のことも本当に好きなんだよ。
自分という橙色に劣等感を持つ煌。
いまだ人と深く関わろうとしない桜ちゃん。
我慢ばかりして自分が揺らいでいる玲くん。
皆、闇を抱えていて。
その闇をあたしには見せてくれなくて。
時折辛そうにあたしを見るんだ。
あたし、そんな皆の闇を…
少しでも取り除いて上げたくて。
でも――できなくて。
無力なんだ、あたし。
力が欲しいよ、本当に。
皆を守れるだけの力を――。