ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「で、でも未遂だし。俺守ったし。あの男以外に寄ってくる奴もちゃんと追い払ったし」
「……"以外"?」
思わず舌打ちして煌を見ると、煌はだくだくと汗をかいている。
そして焦りを露わにしている桜が、履いていた2つのスリッパを手にし、パコーンと煌の頭を叩くと、頭を下げ俺に謝った。
――今朝。
無理やり玲に麻酔を打たれて身体が動かず、仕方なく意識あるうちに芹霞へメールを打った。
更に煌に頼み込んで、今日は家に連れないようにしたんだ。
それなのに――
よりによって芹霞に、
情けない俺の姿が即効暴露され。
付いた煌の守護(ガード)を掻い潜り、
昔も今も隙だらけの俺の芹霞に近づこうとする、許せない不届き者がわらわらと。
本当にわらわらわらと。
俺が幾度も蹴散らしても、
それでもまた別の男は湧いてくる。
なぜ芹霞に近づく?
俺がいつも隣に居るのに。
俺という存在は、牽制にもならないのか。
「難攻不落の眠り姫だね」
玲が愉快そうに笑っている。
くそっ!!!
いばらに覆われたいばら姫は、
腹立たしくもまだ眠り続けている。
俺が必死に呼んでいるのに、本当にぐっすりと。
未(いま)だ起きる気配を見せない。
いつか目覚めるだろう?
そうだよな、芹霞……。
俺は――
今日何度目かの溜息をついた。