ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「今は――違う」
煌は低く、しっかりと言い切った。
褐色の瞳を、金色の瞳から外すことなく。
闇を払拭するのは、橙色の強い色彩。
太陽を彷彿させる、強い意思の光。
思わず俺は、顔を弛ませた。
そしてそれは玲も同じらしく。
「簡単に消せる過去かよ!?」
嘲るような道化師の声。
「忘れられるような、生温いもんだったのかよ!?
ああ、確かにお前は、俺のような純粋な緋影の肉体じゃねえしな」
「……なあ」
煌が道化師を見つめた。
「そんなにしがみつきたいもん?過去って」
道化師は何も言わない。
「前向いちゃいけねえの、俺ら」
煌は道化師から離した手で、橙色の髪を掻き毟る。その表情は、難解な問題に挑む時のような、悩ましげなもので。
「俺、頭悪いからよ、お前がどの程度俺の過去に絡んでいるか判らねえ。けどよ、お前が俺のオリジナルっつーなら、いい加減もうやめろよ。
――そんな、疲れるようなこと」
「!!!」
道化師は目を見開いた。
「お前、芹霞を助けたいんだろ?
ならさ――
手を組まね?」
「「「「は!?」」」」
俺を含め、煌を除いた全員が声を出した。