ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


どんな馬鹿でも、判っちまうだろう。



ああ、こいつは俺と格が違う。



姿形だけではない。


それが持つ器の大きさ。



たかだか私的な過去に囚われた俺は、何てちっぽけな奴なんだろう。


櫂は、俺の"闇"を飲みこむ程の、比較にならない程の"闇"を抱えていて。


それでも揺るぎなく真っ直ぐ前を見据える、その闇色の瞳に、その美しさに…



俺は不覚にも――

見惚れてしまったんだ。



魅入られてしまったんだ。



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