ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


櫂が悪いわけでもねえ。

玲が悪いわけでもねえ。



謝られたいわけでもねえが、

もし櫂が紫堂を変えてくれるのなら。



その未来を見てみたいと思っちまう。

その変化の度合いを期待したいと思う。


そこから…

俺達の付き合いは始まったんだ。



櫂は陽斗をどう思ったのだろう。


あんな憎悪を一身に受けながら、もし俺の時のように謝ったりなどしたら、矜持にこだわる陽斗に関しては逆効果だ。


櫂も玲も、芹霞が絡んでいる以上、そんなことはしないだろうけれど、心の中でどう思っているかは判らねえ。



俺の提案を飲むくらいだ。


当初程、敵視はしていねえはずだ。



だから俺は言わないでおこう。



キスマーク……マーキングは、憎い紫堂の牽制だろうけれど、陽斗自身はそれ以上の、『男』として切に芹霞を求めている。


肉体的に可能な…陽斗という男の限界まで、芹霞を求めようとしているなど、俺は言わねえ。


言えねえだろ。


皆、同じ想いなんだから。



誰が勝っているとかの問題ではなく、そうせざるをえない誰かの事情に、皆、己の姿を重ねてしまうから。


赤い華の痕。


決して、許したくはねえのは俺も同じ。



だけど俺は――

陽斗を責めることは出来ねえ。


< 498 / 974 >

この作品をシェア

pagetop