ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
櫂が悪いわけでもねえ。
玲が悪いわけでもねえ。
謝られたいわけでもねえが、
もし櫂が紫堂を変えてくれるのなら。
その未来を見てみたいと思っちまう。
その変化の度合いを期待したいと思う。
そこから…
俺達の付き合いは始まったんだ。
櫂は陽斗をどう思ったのだろう。
あんな憎悪を一身に受けながら、もし俺の時のように謝ったりなどしたら、矜持にこだわる陽斗に関しては逆効果だ。
櫂も玲も、芹霞が絡んでいる以上、そんなことはしないだろうけれど、心の中でどう思っているかは判らねえ。
俺の提案を飲むくらいだ。
当初程、敵視はしていねえはずだ。
だから俺は言わないでおこう。
キスマーク……マーキングは、憎い紫堂の牽制だろうけれど、陽斗自身はそれ以上の、『男』として切に芹霞を求めている。
肉体的に可能な…陽斗という男の限界まで、芹霞を求めようとしているなど、俺は言わねえ。
言えねえだろ。
皆、同じ想いなんだから。
誰が勝っているとかの問題ではなく、そうせざるをえない誰かの事情に、皆、己の姿を重ねてしまうから。
赤い華の痕。
決して、許したくはねえのは俺も同じ。
だけど俺は――
陽斗を責めることは出来ねえ。