ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
それは、もの凄く嬉しくて。
選ばれるのは玲だと思っていたから。
だって、絵になるだろ、あの二人。
相反する黒と白。
まるで太陽と月。
気品ある美貌の二人の舞う姿は見事だろう。
俺は中途半端な橙色で。
高貴な色と安っぽい色。
どう見ても不釣り合い。
そんな中での奇跡のような当選に、
――凄い、煌…櫂と踊るのッッ!!!?
――せいぜい、飼い主を引き立ててこい。
芹霞は両手を挙げて喜んだくれたけど、緋狭姉はずっと笑い転げていた。
引き立て役でもいいんだ。
櫂が選んでくれたことに意義がある。
少しでも櫂の足を引っ張らないようにと、だから俺、去年の録画を見て、剣舞を練習してたんだ。
――犬が初めて二足歩行したような頼りなさ。その真剣のなさが、見るに耐えぬわ。よし、此処で特別稽古だ。芹霞…出刃包丁2本用意して、この位置で、ひたすら正座していろ。
――ええええ!!? 出刃包丁…!!!? しかも居間で!!? 何で正座!!!?
――さあ…馬鹿犬。剣舞の…稽古だ。剣舞の基本は、相手の動きを読んで、同一化すること。お前みたいに雑念ばかりだと、芹霞に突き刺さるぞ?
練習…というより、芹霞の命がかかった猛特訓。