ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「お前は、俺と違ってよかったな、色々と。……穏やかそうでよかったけどよ。正直、8年前のあの姿を思えば、幾ら俺でも気になっちまうからな」


「……知っていたのか、俺を」


意外だった。


「ぎゃはははは。知らねえで『BR002』と呼んでいたと思ってたのか、お前」


思い切り笑われた。


「どれだけ、神よ? 俺は」


更に大きく笑われる。



「お前は――


俺と同じ道を歩むな」



突然、陽斗が真剣な顔をして俺に言った。



「お前は俺とは違う」



僅かに苦しそうに顔を歪めさせて。


「お前は1人じゃねえ。

それだけは忘れるな」


そして自嘲気味に笑う。


「羨ましいよ……お前が」


ぼそり、陽斗は呟いた。




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