ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
第2日~携帯に咲く薔薇~
├お姫様の恋愛事情
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櫂の纏う漆黒色は――
何処までも地味な無彩色でありながら、目がチカチカする程に強烈な光を放つ。
強烈な漆黒の存在感は、誰もの目を引く。
それは姿態であり――
纏う王者のオーラであり。
昔は存在感が薄くて、転倒すれば人に踏みつけられていたのに、今では見る影もなく。
抗いようのない強大な存在感に、一介の高校生などは太刀打ちできず、ただびくびくして遠巻きに眺めるばかり。
例外は一部の…欲に塗(まみ)れた肉食女達だけだ。
優れているのは姿態だけではない。
歩く頭脳。
受ける試験は全て最高点という信じられない記録を絶賛更新中。
桐夏の特進科生でも常に話題が尽きない存在だ。
昔は平仮名すらロクに書けなくて、あたしが根気強く教えてあげていたのに。
読むことも疎くて、あたし…童話の絵本をよく読んであげていたのに。
今では逆転現象。
特にテスト前には、櫂は…あたしには必要不可欠な存在だ。
そして抜群の運動神経。
体育の授業…準備運動のように軽く流しているだけなのに、明らかに普通人と違う身体のバネを見せ付ける。
更には財閥の御曹司。誰もが畏怖する…次世代の注目株ときたものだ。
天下無敵だ。
何につけても"完璧"の櫂は、己が掲げる完璧主義を地で遂行している。
全く…可愛げない程に。
一方、煌の纏う橙色は――
何処までも派手な色合いであり、やはり放つ光は、櫂同様に強烈だ。
奴もまた目立つ。
大きいし強面だから余計に目立つ。
授業中寝てばかりいるのに、寝てても目立つ。
起きていても目立つ。
常人離れした運動神経は、野生の動物以上にずば抜けているものの。
…勉強は、極端過ぎる程てんで駄目だ。
あたしと一緒に、駄目駄目だ。
集中力はあるのに持続しない。
理解力はあるだろうけれど、理解に至るまでの道のりが遠い。
たまに解答がすぐ出たと思えば、短絡的で深く考えていない。
考えすぎると、奴は"ショート"して怒鳴りだす。
理性より本能の男は、頭で考えることが大の不得手だ。
理性派の櫂とは真逆。
あたしと煌2人のテストの合計点数は、櫂の取る点数には敵わない。
…半分も至らない。