ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
あ、あの……玲くん?
「ふふふふ」
噎せ返るような大量の薔薇の花を背景にして、
実に優雅に上品に――
そして艶やかに。
玲くんは…誘惑するように微笑む。
寝ぼけているんだろうか。
そうだ。
寝ぼけているから…
あたしみたいな小娘に、こんなこと言うんだ。
「だからさ…行こう?
誰にも邪魔されない…静かな場所。
2人きりになれる…静かな場所にさ」
そして…玲くんは、
トドメとばかりに、微笑んだんだ。
ぶわりと拡がる、壮絶な…色気。
惜しみなく放出され、"垂れ流し"…フィーバー状態。
鼻の奥がむずむずする。
鼻血が吹き出してきそうだ。
あたしは――
絡められたように動けない。
視界は色濃くなる…ピンク色。
妖しい妖しい…甘さを忍ばせて
きっと玲くんは――
寝ぼけてるんだ。
そう、寝ぼけているからだ。
寝ぼけているから、変に色気があるんだ。
寝ぼけている人に、罪はないよね。
そうだよね、寝ぼけているんだから。
「……ねえ芹霞、
僕と一緒に寝よ?」
首を傾げるような、可愛い動きの破壊力。
そのとろんとした眼差しが醸す空気は強烈で。
あたしは益々色濃くなるピンク色を、その甘い甘い甘すぎる桃色を、これ以上は必死に見ないようにした。
見てしまったら――
恐ろしいことになる。
あたしの防衛本能が、危険を告げた。