ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


しかし安泰なはずの桐夏も、あたし達が中2の時に、学園長という名の経営者が変わり、システムが変わってしまった。


エスカレーター式なのに、高校上がるための試験が必要になり、外部への受験を認めるようにもなったんだ。


困ったのはあたしと煌。

試験に耐えうる勉強をしてこなかった。


あたしはこのまま高校に進むつもりだったけれど、煌は試験があるのなら、高校に進まず櫂の護衛に専念すると言い出した。


奴の学力は、凄まじく低い。


煌はもう仕事に就いているし、学歴に拘る必要もないし…。

そんな空気の中、櫂は…あたしと同じく桐夏に進むと宣言した。


実際櫂は、中学時にもずば抜けていたから、有名子女が通う超難関校からのお誘いがあった。

紫堂の御曹司たるもの、絶対そちらに行く方が相応しい。


それに櫂は、桐夏にあたし達以外の友達がいるでもなく、桐夏の偏差値は低い方だから、てっきりそっちに行くとばかり思っていたけれど、彼は譲らず…そして煌に言った。


――桐夏にお前も一緒だ、煌。


そこで焦ったのは煌。


――いや、だから俺は…。

――駄目だ。3人で行く。


試験当日まで狂ったように叫びながら単語帳を見ていたのはあたしと煌だけで、徹夜続きの末に試験することになった櫂は、試験開始の合図まで軽く寝ていたらしい。


いつもながら…

櫂は余裕だった。
< 53 / 974 >

この作品をシェア

pagetop