ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「は!? 御階堂も緋影!?」
鳶色の瞳が見開かれる。
「ということは、篠山亜利栖が探していた弟……『ひかげみつる』は、御階堂だったってことか!?
確かに御階堂…"みつる"だけど…」
一同の視線を集めた陽斗は、
金色の頭をがしがし掻いた。
「俺を"寂しいっ子"みたいに見るんじゃねえ。
ああ、確かに御階堂は緋影だ。だがあいつはそれには気づいていない。気づいて利用しているのはあの女だけだ。そして俺もあいつを利用した。ただ…それだけだ」
そうは言うけれど。
陽斗は何かを隠している。
そう、俺は思った。
「あのさー」
煌が疲れたような声で割った。
「篠山亜利栖が藤姫で、御階堂が篠山亜利栖の弟の緋影だということは判った。だけどさ、それが芹霞の声が奪われたのとどう関係あるんだ?」
「本当に馬鹿蜜柑ですわね。、制裁者(アリス)の真紅の邪眼を操る元老院が藤姫だとしたら、藤姫の意思で芹霞さんの声を奪っているということですわ」
「なんでだよ!?……というか、何でそんなことが出来るんだよ。紫堂の血を引いてもいねえのに。大体藤姫っていうのは、いい奴だったじゃねえか。紅皇と休戦同盟までして今まで元老院を抑えていたんだし」
「そこが、根本的に違うんだ、煌」
俺は静かに言った。
「藤姫は英知溢れる崇められるべき存在ではなかった。
むしろその逆だ」
「はあ!?」
「その為の元老院、その為の制裁者(アリス)だということさ。ま、元老院設立当時は違ったのかも知れないけどな」
「……そういうことか」
玲には俺の言葉が理解出来たようだ。
恐らく桜も。
煌は腕を組んで唸っている。
芹霞は魂が何処かに飛んでいるようだ。
「芹霞を縛ったのが藤姫たる篠山亜利栖なら、彼女を何とかすれば芹霞の声は戻るということか」
方向性は見えたけれど。