ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
中学の同級生の殆どは…どうせ試験をするのなら、大学受験に有利な処へと…外部に流れ、代わって外部から学生が流れ込んだ高等部。
高校になるとシステムが変わって、特進科なるものが新設されていた。
選ばれた者しか入れないのなら、櫂が入るのは当然の事象なれど…櫂はそれが不服だったらしい。
ずっと3人一緒の校舎で学びたかったらしい。
確かに――
1人だけは寂しいけれど。
それで櫂は、異議申し立てをしに、校長室に乗り込んだ。
しかし逆に校長と理事長に土下座までされて特進科に居るよう懇願され、更には、御曹司の忙しい身を案じて出席日数はノーカウントにするだの、護衛役の煌を特進科と普通科に行き来させてもいいという条件を出してきた…のだと、後日煌から聞いた。
でも、それだけじゃないんだろう。
櫂を見かけると、校長先生は蒼い顔で泣きそうになっているから。
そして櫂は、特進科で大人しくしていると思いきや、何故か休み時間にはわざわざ普通科に出向いて来るものだから、あたしは初っ端から、女達の痛烈な嫉妬を受ける羽目になった。
だけど負けるものか。
こんなことは、小学生の時から慣れている。
紫堂の急な仕事がない限りは、昔から登下校は3人いつも一緒。
煌はあたしと一緒住んでいるし、煌が櫂の護衛役である以上、3人セットは昔からの決定事項。
櫂も煌もあたしには過保護な傾向があり、見知らぬ人が近づいてくるものなら、あたしを庇って威嚇を始める。
何度も誘拐された身の上としては、余り強いことは言えないけれど、それでも幼馴染みで在る以上、本来なら気を使わなくてもいい間柄だと思えば。
護衛対象外のあたしにまで余計な気を張らせてしまう事実が、忍びなく申し訳なくて。
櫂は毎朝、「1人で歩くな、必ず俺か煌を傍に置け」と念を押すけれど、言われる度に自分の"弱さ"を思い知らされて。
8年前とは反対の――
"守られる自分"が情けなくて。
いつも密かに嘆息をつきながら、適当に相槌を打っている。
ごめん、本当に適当なんだ。