ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「確実とはいえねえが……あの施設に、邪眼を無効化……或いは弱める何かがあるはずだ。制裁者(アリス)の制御実験もしていたはずだからな」
僅かなりとも可能性があるならば、
「頼みたい」
そう告げた俺に、陽斗は無言で俺を見つめてきた。
「いいのかよ、俺を信用して」
「芹霞限定だ」
陽斗は黙ってしまった。
「だけど……僕までここを出てしまっていいんだろうか。結界の中心たる此処を、正直今、離れたくない。ゲームプログラム……血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)だって、完全な解決策が見つかったわけでもないし、擬似プログラムがどこまでもつか」
「ボクがやるよ」
突然、少女の声がした。
腫上がった顔。
頭には潰れた、血染めの猫耳。
ああ、あの腹立たしい氷皇を思い出す。
「お前は……」
「遠坂由香。
ふつつかものですがよろしく、紫堂」
少女は丁寧に土下座した。