ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「故ありまして、会長の元で君を殺すプログラムを組んでいました。だけど神崎にガツンとやられて、目が覚めました。
あの陽タンが此処で協力するというなら、ボクだって協力したいと思います。若輩者ですがよろしくお願いします。ぺこ」
否ともいえぬ、独特な雰囲気を持つ少女だ。
潔いのか、開き直っているのか。
しかもなんだ、"ぺこ"って。
「あー、神崎ぃーッッ!!!」
芹霞を見つけると、身体全体で"大きな喜び"を表現し、両手を広げて芹霞に飛びついた。
何ともリアクションが大きい少女だ。
芹霞は口をぱくぱくしているが、猫耳――遠坂は意味が判らないらしい。
仕方がなく携帯に何かを打って、遠坂に見せている。
「"よかったー、無事に会えて嬉しい"……って、君、声どうしたの?」
また芹霞がぽちぽち打ち始めた。
「"やんごとなき事情により、声帯の機能一時休止"……陽タン、まさか」
遠坂が振り返った先の金色は、不機嫌そうに頷いている。
「会長……の訳、ないね。だって会長は神崎にぞっこんだからね」
反応したのは俺だけではないらしい。
「ぞっこん……って胸糞悪い」
煌が酷く顔を歪ませる。
全く持って同意見だ。
「君だって、見ていただろ、如月。
熱いあつ~い会長の告白をさ。
もう長いこと神崎にぞっこんで欲求不満だったからね。今頃神崎取られて怒り狂っているだろうね」
遠坂は、軽やかに笑った。