ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「「「告白ッッ!!?」」」


俺と玲と煌が同時に声を上げ、芹霞を見ると芹霞はきょとんとした顔をしていた。


「おいおい神崎。まさか忘れてしまった訳じゃないよね。あんなに熱い抱擁……」


「抱擁ッッ!!?」


俺の声が裏返った。


芹霞は何かに思い至ったのか、一度柏を鳴らすと頷き始める。

その顔が不快に歪まれたのを見て、俺は内心ほっとした。


告白すら記憶に残らぬ程、不快と捉えているその対象。


ここで頬を赤くでも染められたら、俺はきっと怒鳴り散らすだろう。


「しかもボクの目の前でさ、

『1年前のあの時からずっと好きなんだ』

とか言って……」


俺は人知れず、舌打ちをする。


気分は最悪だ。

1年前が何だ。


俺なんて12年は片思いをしている。



「1年前!? 付き纏ったのは最近じゃないのか!?」


不快を露にした玲が俺を見る。


あの男が芹霞に執着を見せたのは、会長に就任した今年4月からだと思っていたが。


「『好きだ』

『好きなんだ、どうしても手に入れたい』

『1年前のあの時からずっと好きなんだ』


世の乙女はきゅんきゅんしちゃうねー、くーっ」


「わざわざあいつの物真似するな、気色悪いッッ!!」


「いったいなー、如月。何怒ってるんだよッ!! 何だよ、何だよ、ここにいる男達は。悪いのはボクじゃないぞ!? ボクはそんな会長を打ん殴って、告白タイムを中断させたんだぞ!? な、神崎」

芹霞はうんうん頷いている。


「陽タンも何だよ、その冷たい目はッ!! ボクだって結果、氷皇にぼこぼこにされたんだぞ!? 褒めてもらいたいくらいだよッ!! ぷんぷん」


"ぷんぷん"と言葉に出す人間を

初めて見た気がする。




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