ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「はあ!!?何で祭り!?
お前状況判っているのか!!?」
"別に縁日気分を味わいたいとかじゃなくさ、紫堂のオールスターが外で出揃うのは初めてだから"
いつも日陰にいる玲くんも、そして紫堂の警護団長も護衛役も。
華やかな舞台に立てない人達だから。
それはいつも櫂だけに許された場所だったから。
もし皆が日向で揃うことがあるならば、それはどんなに見事なものだろう。
どんなに微笑ましいことだろう。
"遠目でいいから。ちょっとだけ見たい"
「あいつらなど、いつも見てるだろうがよ」
"表舞台で揃うことに意義があるの"
「表も裏も同じだと思うがよー」
陽斗は眉間に皺を寄せて、
がしがしと頭を掻いている。
"ちょっと。5分でいいから"
あたしがお願いポーズを追加した時、
陽斗の顔に突然警戒の色が走った。
そしてその顔が忌々しげな冷たいものに変わった時。
金の瞳が睨み付けるように1点を見つめた時。
「別にいいじゃないか。
――なあ、道化師」
突如後方で、陽斗ではない粘着質の声がした。