ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「はあ!!?何で祭り!?

お前状況判っているのか!!?」


"別に縁日気分を味わいたいとかじゃなくさ、紫堂のオールスターが外で出揃うのは初めてだから"



いつも日陰にいる玲くんも、そして紫堂の警護団長も護衛役も。


華やかな舞台に立てない人達だから。

それはいつも櫂だけに許された場所だったから。


もし皆が日向で揃うことがあるならば、それはどんなに見事なものだろう。

どんなに微笑ましいことだろう。


"遠目でいいから。ちょっとだけ見たい"


「あいつらなど、いつも見てるだろうがよ」


"表舞台で揃うことに意義があるの"


「表も裏も同じだと思うがよー」


陽斗は眉間に皺を寄せて、

がしがしと頭を掻いている。


"ちょっと。5分でいいから"


あたしがお願いポーズを追加した時、

陽斗の顔に突然警戒の色が走った。



そしてその顔が忌々しげな冷たいものに変わった時。


金の瞳が睨み付けるように1点を見つめた時。



「別にいいじゃないか。


――なあ、道化師」



突如後方で、陽斗ではない粘着質の声がした。





< 569 / 974 >

この作品をシェア

pagetop