ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「で、芹霞。やってみて…どうだった?
1章終えるの、約8時間かかるけれど…初っ端から結構"むふふ"なもんだったでしょ。
少しは"オトコゴコロ"判ってきた?
恋愛オンチのあんたには、とってもいい教材でしょう?」
むむむ?
1章?
"むふふ"?
教材?
「鈍いわね、あれよあれ。
携帯恋愛ゲーム!!!」
ああ、なんだ!!!
「……。
………?
………??」
で、それは何?
ハテナしか浮かばないあたしに、弥生は痺れを切らしたようで。
「昨日説明したでしょう!!?
携帯でやる――
ドキドキキュンキュンする、今流行の恋愛ゲーム!!
オトメゴコロを刺激し、オトコゴコロが判る、乙女の為のゲーム!!
イケメン逆ハーレム万歳!!!」
はて?
「あんたみたいな、おいしい環境にありながら!!!
てんでリア充満喫できない、極度の鈍チン矯正に最適な!!!
これぞ世のオトメの正しい姿だ、みたいな恋愛バイブル!!!」
???
「……判ってないでしょう?」
こくりと頷くと…
「そうだ…よね。芹霞だものね…」
弥生は酷く疲れた顔をして、大げさな溜息をついてしまった。
「昨日の私の説明時間は、何だったんだろう…」
………。
だけど――…
――DLアドをメールで送ってあげる。これをクリックして進めてね。
そんなこと…言われて、受信させられた気もする。
すっかり忘れてた。
昨夜はそれ処じゃなかったし。
「ま、まあドンマイさ、マイフレンド!! 次のあたしに期待してくれ!!」
「芹霞の自主性に任せたら、私おばあちゃんになってそう。強制DL。はい、携帯貸して。ええとDLアドレスは……」
「あたし、そんな怪しげなゲームは…」
「はい、携帯!!!」
嫌とは言わせない気だ。
仕方が無い。
渋々…スカートのポケットから、お気に入りのメタルピンクの携帯を取り出して渡す。
その時――
カサッ。
携帯以外の"何か"が、床に落ちた。