ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



陽斗が周囲に目を配っている僅かな間、先輩はあたしの名を呼んだ。


「神崎……」


あたしは首を傾げて、先輩を見上げた。


真剣な表情が落される。


「前に言ったこと、

なかったことにはさせない」


その意図にあたしが気づく前に、



「僕は…お前を手に入れる」



そう笑った先輩は。


以前の……

あたしが嫌悪するその顔で。


………!!?


よからぬ予感に、思わず動きを止めたあたし。


先輩は含んだ笑いを見せると、



「GAME OVER」



そう言いながら――

"翡翠"と札がかけられた…


大きな観音扉を押したんだ。



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