ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
 


そしてあたしの腕をぐいと掴み、

ずんずんと部屋に入っていく。


――!!!


眩しい。


フラッシュの嵐。


ロビーで見たTVカメラと、一眼レフのカメラが向けられる。


その人数、100は下らない。



一体、何事!!?

何であたしを撮ってるの!!?



陽斗が何かを叫んで、あたしの腕を掴んで引き留めようとする。


だが――



「この度は、私…御階堂充の婚約披露会見にお越し頂き、誠にありがとうございます」




金の屏風を背にして一人壇上に上がった先輩は、あたしの真向かい側で、マイクを通して…不可解なことを言い出した。



まずい。


あたしはそう思った。


此処に居てはいけない。


何かがあたしを急き立てる。



逃げよう。



陽斗に振り返った時――




「この女性が僕の婚約者たる、

――…神崎芹霞さんです」



あの意地悪そうな声音が大広間に響く。



誰が――

誰の――


婚約者だって!!?



その叫びは言葉に出せなくて。



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