ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
裏では、発作ばかりおこす心臓。
倒れれば鬼の形相の母が手を上げ、いつの間にか隠れて倒れ込むのが日課。
母が求めるのは"次期当主"に相応しい僕で、母の思い通りに動く…道具たりえる僕で、病弱な僕は必要なかった。
――玲、お母様の可愛い玲…。
僕の呪いが成就された時、
今の苦しみから解放される。
だから僕は"僕"を押さえ込んで、
ただひたすら"次期当主"を目指していた。
呪いから、解放される日を…夢見ていたんだ。
噂で――
僕には3つ違いの従弟がいるとは聞いていた。
僕の叔父にあたる――
紫堂当主の嫡男。
血筋は、僕よりもいい。
会ったことはなかった。
噂の域では――
惰弱で唾棄すべき存在だと。
僕にとっては注視に値しない存在だと。
そう言われ続けて、周囲から遠ざけられていたんだ。
僕自身…、自称"従兄弟"は沢山いるから、あえて気にすることもなかった。
そして気づけば。
当主は息子ではなく、僕をいつも隣に置き――やがてその実の息子と妻を家から追い出した。
――ああ、お祝いせねば!!!
それを聞いた僕の母は涙を流して喜んだ。
完全実力主義とはいえ。
幾ら弱々しい存在だとはいえ。
当主が、"純血"故に嫡男に次期当主の座を与えたらと、危惧していたらしい。
――これで邪魔者はいなくなった!!
実子なのに、追い出された僕の従弟。
正妻なのに、追い出された僕の叔母。
その姿見ることなく…
話すらしたことないままに。
弱き者という理由で、
父親から絶縁された僕の従弟。
心が痛むのは――
僕が…彼と同じ血を引くからなのか。
僕は本当に――
此の位置にいていいのだろうか。
何度も…自問自答していたんだ。