ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「――…でだ!!!? ――…は、――――だ!!!! ――……!!!! いいから――――!!!」
何処からか怒声が聞こえてくる。
この部屋の外からだ。
反射的に悪寒が走るこの声は…あいつだ。
御階堂充。
思わず飛び起き、握りしめた拳に力を込める。
ふるふると怒りに震えるあたしの拳。
煌を唸らせた、あたしの怒りの鉄拳を、まずは食らわしてやろうか。
それとも、得意の頭突きを食らわせてやろうか。
鼻息荒く、声のするドアを睨み付けた…その時だった。
もぞっ。
………?
もぞもぞっ。
………!!?
視界の左が――
突如もぞもぞと…蠢(うごめ)いたんだ。
あたしが寝ていたのはダブルベッド。
5人くらい並んで寝れそうな、超特大ベッド。
あたしが剥いだ布団を乗せて、
明らかに何かが…動いていた。
何?
一体何!!?
もぞもぞっ。
………!!!
もぞもぞもぞっ。
ひいいいっ!!?
恐怖心MAX。
血色の薔薇の痣…もといあのゾンビが居たらどうしよう!!?
真紅色の目を持つ何かかが居たらどうしよう!!?
いや…それより…
黒くてらてらした…"あいつら"だったら!!?
群れをなして復讐にきたとか!!!?
頭の中は、大パニックで。
どうする、どうする!!!?
頭に浮かんだ1つの策。
"攻撃は最大の防御"
そうだ。
襲われるくらいなら…
先手必勝!!!
布団を剥ぎ取り、先輩に向けるはずだった拳を打込んだ。
中を確かめもせず。
ドガッ
渾身の一打!!!
「いってえ!!!!」
声と共に起上がったのは――
!!!!!!
手で押さえられた金色の頭。
「いってえんだよ、芹霞ちゃん!!」
至極不機嫌そうな金の瞳があたしを見つめた。