ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


『血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)はね、住人を襲って仲間を増やしているよ。

今、どれくらいの数だろうね? 東京都の人口は約1,300万人。祭り見たさに外部からの観光客も多いだろうしね、敵が2,000万人までにはならないことを祈るしかないね~』


『櫂、櫂ッッ!! 皆で早く今のうち逃げてッッ!!』


『血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)化した芹霞チャンと戦う? それとも芹霞チャンも紫堂も棄てて、命惜しさに逃げてしまう?

それもいいか、負け犬そのもので。

あはははは~』


俺は目を瞑る。


「あのさー」


煌が橙色の頭を、片手でがしがし掻きながら言った。


「俺のことなら別にいいから。

生かそうとか考えなくていいからさ」


そして真剣な褐色の瞳を俺に向ける。


「芹霞だけは助けてえ」


「同感だね」


玲が微笑んだ。


「会えずじまいで終わるなんて真っ平ごめんだ」


続いて桜が言った。


「ふう。久々の大量戦闘。腕が鳴りますわね」


我が愛しの部下達は、つわものだ。

そして優しい。



「俺についてくるか?」



そう言えずに居た俺に、


「「「勿論」」」


そう言わせてくれたんだ。



俺の命より何より――

どうしても芹霞に触れたい。


芹霞の居ないこんな処で朽ち果てたくない。


この状況では許されぬ俺の我侭。


そしてこれは、皆の想いか。


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