ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



『芹霞だけは助けてえ』


『会えずじまいで終わるなんて真っ平ごめんだ』


『ふう。久々の大量戦闘。腕が鳴りますわね』



馬鹿だ。

皆は馬鹿だ。

あたし並に馬鹿だ。



こんな時に何を言っているんだ。


あたしなんてどうでもいいでしょう?

闘う前に逃げるべきでしょう?


あたしは涙が出た。



嬉しかったんだ。



あたしの真情は…

嬉しくて仕方が無かったんだ。



だけど、喜んではいけない。

皆の命がかかっていることだから。


だからあたしは――

拒まないといけない。



だけど、拒むことが出来なくて。


会いたいと…思う心から、

あたしは逃れることが出来なくて。



『芹霞……』



浅ましいあたしは…

櫂に託したんだ。



櫂は。

櫂なら。



皆を早く逃がしてくれる。


あたしより何より――

大好きな皆を生かせるために。


8年前のように、あたしを選ばずに居てくれると。


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