ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


だけど――


『ここは地獄になるが、

……来るか?』



ああ、もう駄目だ。



『俺達の…俺の元に…』

 
 
もしも櫂達が本気で望んでくれるなら。



紫堂とかは肩書きは関係なく。

ただ…あたしと共に居たいと思ってくれるのなら。



――芹霞ちゃあああん!!!



「行くッッ!!」



躊躇う必要が、何処にあるだろう。



『陽斗ッッ!!!』


『芹霞連れてそこから逃げ出せッッ!!!』


「今まさにそう思ってた!!」



ぎゃぎゃは笑うと同時に、陽斗は…テーブルを蹴り上げて窓にぶつけた。



カシャアアン。



窓硝子が砕け散った。



陽斗はあたしの腕を掴んで立ち上がる。



「逃げられると思ってる?」



それを阻もうと立ち上がる蒼生。




「氷皇悪いな。

思うんじゃなく、するんだよッッ!!!」




蒼生の足と陽斗の腕がぶつかった。



その衝撃で携帯の画面が割れた。

あたしは慌ててそれを拾う。


割れただけで、壊れてはいない。



「……くっ!!」



顔を歪ませた陽斗が、その腕を捻って肘を突き上げる。


蒼生は上体を反らしてそれをかわして、不敵な笑みを浮かべた。




そして――


動きを止めたんだ。


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