ひめがたり～いばら姫に真紅の薔薇を～
猛スピードで景色が流れる。
あたしは絶叫系のアトラクションは大好きだけど。
垂直落下のものもよく乗って遊んだけれど。
安全装置無しの危険行為は、断じてしたことがない。
落下地点に、マットとかふかふかなものがあるわけがない。
あたしの頭に、潰れたトマトが思い浮かぶ。
「うぎゃああああああ!!!」
多分、初めて――
心底絶叫を上げていたと思う。
「うっせえよ、芹霞ちゃん」
憮然としている陽斗は、余裕で。
そんな中でも落下しているんだけれど。
もう駄目だ。
飛ぶ。
意識が飛んじゃう。
そう思った時。
陽斗があたしを抱えたままでくるりと一回転をして、着地した。
地面に――
着地できた。
生きた心地していないけれど。
でもかろうじて生きている。
…何とか。
