ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
人間のようにはすぐ死なねえ、俺らの敵。
躊躇や迷いがあればやられてしまう。
やられるだけならまだしも、今度は逆に敵の一味となって、護りたいものを襲う側となっちまう。
だから――
手加減しねえんだ。
だから――
人外の"モノ"と扱うしかねえんだ。
決して…制裁者(アリス)の血が目覚めたわけじゃねえ。
俺の身体には、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の返り血や細やかな肉片が飛び散っている。
悍(おぞま)しい真紅の姿を気にしている余裕もなく、手当たり次第に攻撃を繰り返し、俺達はとりあえずは西に向かった。
今更ながら眺めれば――
紫堂の……不可思議な力を持つ2人は、圧倒的なその力の威力で大量の血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を波動状に薙ぎ倒し。
紫堂の力を持たない女装の警護団長は、裂岩糸を用いたその精練された技術で、広範囲の敵を瞬時に細かく切り刻み。
奴らの圧倒的な力を知らないわけでもなかったけれど。
そんな一同の力を間近に見せつけられて、偃月刀を振るうしか能のない自分を思い知って、心が挫けそうになる。
俺には力と経験が少なすぎる。
いくら制裁者(アリス)だったと言われても、その具体的な記憶がなければ、ただの忌まわしい看板を持ち歩いているだけだ。
俺の制裁者(アリス)としての技術は、緋狭姉に書き換えられてしまっているから。
しかも最悪なことに、
「何しやがったんだよ、緋狭姉~~ッッ!!」
砕かれた腕につけられた腕環。
重い。
目茶苦茶重いんだ。
だから一層速度は鈍る。
だけどその分、重さの威力は増すけれど。
後で腕環の意味が判ると言っていたけれど、全然俺には判らねえ。
邪魔だから取ってしまいてえけれど、前の胸につけた防具みたいに、てんでびくともしねえ。
緋狭姉~~!!!
ますます3人との差は広がるばかり。