ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


そんな劣等感に苛んでも、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の数は依然減らず。


苛んでいる暇に、身体を、偃月刀を動かさないといけない。


「駄目だ、電源が入っていない」


こんな戦闘中なのに、余裕の玲は電話か。


反対の手からは目映いばかりの青い光。


俺達4人を取り囲み…尚且つそこから放射状に拡がる光で、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を積極的に焦げ付かせている。


玲は強くなった。


元々強い男だったから、発作を起こして倒れたということ事態、ありえねえことだったんだけれど。


玲の行動に迷いがなくなったと思う。


自信…ともまた違う。


いうなれば、"意思"だ。

自らの意思。


その意思が表情にのぼってきた途端、玲の動きは変わった。


櫂に遠慮していたその力の使い方が、容赦なくなった。


確かに緋狭姉から、守護石の使い方を伝授して貰ったから、幅広く力を使えるようになったのかもしれねえけど、それでも急速に玲の力は強くなった。


強くなったのは力だけじゃねえ。


御階堂の家での制裁者(アリス)の残骸。


俺は正直ぞっとした。


確かに、敵を目にした玲の裏の顔はえげつねえ。


何度も玲の拷問場面から、目をそらしたこともある。


だが、あの制裁者(アリス)の骸は異常だった。


肉の塊。


死んでも尚、攻撃を加えた名残もあった。


それから――だと思う。


玲の顔に、僅かなりとも意思が浮かぶようになったのは。

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