ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


 
強くなるから。

頑張るから。



お前は俺と一緒に死ぬって言ってくれたろ?


だからどこまでも俺は、

お前を傍に置いて死にてえんだ。



ああ、お前に…

会いてえよ…。



「あ、もしもし芹霞!!?」


玲の嬉しそうな声に俺は我に返った。


「良かった、携帯壊れていなかったね。今何処!!? 新橋? 地下? 地下鉄? 銀座線? ああ、多分山手線事故で地下鉄も止まってるかも知れないから、線路沿いを来て。こっちは渋谷から向かうから、途中で会おう。

……うん、無事で。こっちは大丈夫だから。そうだね、会おうね、絶対」


長えよ、玲。


血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の喉元を裂きながら、俺は完全に苛々していた。


横目で見る玲は、本当に穏やかな顔をして。

柔らかい…を通り越して蕩けそうだ。


そんなに、声聞けるのが嬉しいのかよ。


俺だって携帯が使えたら、壊れないなら、使いてえよ。


毎日毎時間、

耳元で芹霞の声聞きてえよ。





「好きだよ――芹霞」





切羽詰まったような切なげな声が聞こえた時。



俺は身体の動きを止めてしまった。


櫂も同じく。


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