ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「危ないッッ!!」
桜が裂岩糸で、俺達に噛みつこうとしていた血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を切り刻んだ。
「好きだから。
――僕達、全員」
ボクタチ。
複数形の悲しみ。
やっぱり玲は玲で。
電話を切った玲は、小さな溜息を一つした後、何事もなかったかのように俺達に言った。
「芹霞と陽斗は今銀座線の線路を渋谷に向かって走っている。だから僕達は反対に新橋に向かって走ろう」
そう促すと、とりあえず地下鉄銀座線の看板が見える場所を探しに移動した。
"好きだよ――芹霞"
玲は――
どうするつもりなんだろう。
櫂は――
どうするつもりなんだろう。
俺は――。