ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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山手線のぶつぶつ途切れた線路を走り、渋谷駅に行き着く。


いつもの賑わいはなく、

駅は崩れて瓦礫化していた。


横倒しの列車。

救急車やパトカー、消防車。

だが人間が誰もいなくて、閑散としている。


血色に染まった地面。

血糊がついた瓦礫。

車体。


凄惨な崩壊光景は、事故とは違う"何か"が襲ったのだと言っているようだ。


俺達は地下に潜り、銀座線の看板に向かって走る。


駅構内にも人は居ない。


居ない代わりに血色の瓦礫。


「切ないですわね」


どこまでも闇色に続く線路を走りながら、その色に染まった桜が呟いた。


「私達が相対していた中に、ここで犠牲になった方々も混ざっていたのでしょう」


「でも行くしかねえだろうよ」


殺したいんじゃねえよ。


血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)だって元々は人間だ。

操られているだけで元に戻るのなら、その方法を見つけてやりてえ。


だが。


この血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の存在意義が、櫂への呪詛であるならば、そんな猶予はねえ。


皆それを判っている。


判っていて、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を消している。


「なあ、玲」


櫂が、渋い顔をしながら玲に声をかけた。


「呪詛というのは、簡単に解除できるものなのか?」


車両は来る気配はねえ。

完全停止しているようだ。


"外苑前"のプレートを横目にを通り抜ける。


芹霞の気配はまだねえようだ。

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