ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
そして玲は、月長石を取り出した。
「力の消耗が激しい。今の内に電気…電磁波を溜めておく。
ははは、緋狭さんから移動可能な結界の……月長石の活用法を聞かなければ、今頃僕と櫂はやられてたよ。凄い……呪詛だ」
青光が触手のように伸びる。
「結界を強める。少しだけ此処の力を貰おうか。
ホームに上がっていて」
照明がぱんぱんと音を立てて弾け飛ぶ。
自動販売機が光に包まれる。
電気が通っている物体は全て青光となって、玲の触手に吸い込まれていく。
眺めてみれば、意外にも多くの電気系統があったみたいで、ホームの照明は失われているのに、玲の光でぼんやりとした明るさが灯される。
その時だ。
「ぎゃあああ、何、何!!?
人魂でも飛んでるの!!?」
聞き慣れた少女の声が響いてきたのは。
俺より、玲より…
誰よりも早く反応したのは、
「芹霞!!!」
やはり櫂で。
身を翻して、反対ホームに舞い降りて。
「櫂~~ッッ!!!」
見たくもない、きつく抱き合う二人の姿に、
俺は胸が締め付けられたんだ。
泣き叫びたい程…
胸が苦しかった。