ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


そして玲は、月長石を取り出した。


「力の消耗が激しい。今の内に電気…電磁波を溜めておく。

ははは、緋狭さんから移動可能な結界の……月長石の活用法を聞かなければ、今頃僕と櫂はやられてたよ。凄い……呪詛だ」


青光が触手のように伸びる。


「結界を強める。少しだけ此処の力を貰おうか。

ホームに上がっていて」



照明がぱんぱんと音を立てて弾け飛ぶ。

自動販売機が光に包まれる。


電気が通っている物体は全て青光となって、玲の触手に吸い込まれていく。

眺めてみれば、意外にも多くの電気系統があったみたいで、ホームの照明は失われているのに、玲の光でぼんやりとした明るさが灯される。



その時だ。




「ぎゃあああ、何、何!!?


人魂でも飛んでるの!!?」



聞き慣れた少女の声が響いてきたのは。


俺より、玲より…

誰よりも早く反応したのは、



「芹霞!!!」



やはり櫂で。



身を翻して、反対ホームに舞い降りて。



「櫂~~ッッ!!!」



見たくもない、きつく抱き合う二人の姿に、

俺は胸が締め付けられたんだ。


泣き叫びたい程…

胸が苦しかった。


< 675 / 974 >

この作品をシェア

pagetop