ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「まさか…陽斗…死ん「縁起でもないこと言うな!!!」

「おま……っ」


泣きべそ芹霞に、胸に頭突き食らった。


どうやら、最悪な事態ではないらしいが、


「新橋で……血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に取り囲まれたとき、あたしを逃がしてくれたの。あたしも一緒に居るって言ったのに。陽斗、笑いながら"後で追いつくから"って。"赤坂まで行け"って……」


危篤な状況ではあるらしい。


「助けに…行く?」


玲の声に、俺は頭を横に振る。


「んなことしたら…あいつ、噛み付くぞ?」


毛嫌いしている奴らに助けられたとあらば。


「陽斗は…来る」


櫂はそう、断言した。


「芹霞が…いる限り」


苦渋の端正な顔。

櫂も気づいているんだろう。


陽斗が、芹霞に惚れていることを。


櫂だけじゃねえだろう。


いつでも判らないのは…


「うん。危機を乗り越えてきた戦友だからね!!」


この…阿呆タレだけで。


「そうだ、戦友を信じなくてどうする!!!

戦友ファイト、オーッッ」


何が"戦友"だよ。

何が"オーッッ"だよ。


「「「「………」」」」


「え? 何? 何で皆乗ってくれないの? あたし1人…馬鹿みたいじゃん」


馬鹿なんだよ、お前は。


報われねえな、陽斗も。

報われたら、たまんねえけどさ。


――ぎゃははははは。


陽斗…大丈夫だよな?


芹霞を逃がしたということは…それだけ追い詰められた状況だったんだろう。

足止め、しないといけない程に。


陽斗、踏ん張れよ。

必ず、追いついて来いよ?


< 677 / 974 >

この作品をシェア

pagetop