ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「まさか…陽斗…死ん「縁起でもないこと言うな!!!」
「おま……っ」
泣きべそ芹霞に、胸に頭突き食らった。
どうやら、最悪な事態ではないらしいが、
「新橋で……血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に取り囲まれたとき、あたしを逃がしてくれたの。あたしも一緒に居るって言ったのに。陽斗、笑いながら"後で追いつくから"って。"赤坂まで行け"って……」
危篤な状況ではあるらしい。
「助けに…行く?」
玲の声に、俺は頭を横に振る。
「んなことしたら…あいつ、噛み付くぞ?」
毛嫌いしている奴らに助けられたとあらば。
「陽斗は…来る」
櫂はそう、断言した。
「芹霞が…いる限り」
苦渋の端正な顔。
櫂も気づいているんだろう。
陽斗が、芹霞に惚れていることを。
櫂だけじゃねえだろう。
いつでも判らないのは…
「うん。危機を乗り越えてきた戦友だからね!!」
この…阿呆タレだけで。
「そうだ、戦友を信じなくてどうする!!!
戦友ファイト、オーッッ」
何が"戦友"だよ。
何が"オーッッ"だよ。
「「「「………」」」」
「え? 何? 何で皆乗ってくれないの? あたし1人…馬鹿みたいじゃん」
馬鹿なんだよ、お前は。
報われねえな、陽斗も。
報われたら、たまんねえけどさ。
――ぎゃははははは。
陽斗…大丈夫だよな?
芹霞を逃がしたということは…それだけ追い詰められた状況だったんだろう。
足止め、しないといけない程に。
陽斗、踏ん張れよ。
必ず、追いついて来いよ?